
コラム
富山新港「入港記念楯」制作しました
こんにちは!Webも工作も満喫している伊藤です。今回は、先日納品した「入港記念楯」のお話です!
2025年5月9日、射水市の富山新港海王岸壁(海王丸パーク)にアメリカのクルーズ船アザマラ・パシュート(Azamara Pursuit)が初寄港しました。当日は入港歓迎式が開かれ、内川周辺へのシャトルバスも行き来し、海外からの観光客で賑わいました。
クルーズ船が始めて寄港する際に、港から船へ「入港記念楯」を贈る風習をご存知でしょうか?今回の入港式典でも、富山新港から楯を贈るということで、ご相談をいただきました。
「せっかく射水市に寄港してくれるのなら、ならではのものを贈りたい!」
という想いに駆られ、何を素材にするか試行錯誤…。そんな折、会社近くの漁師小屋(番屋)が取り壊されるという話を聞き、その素材を活用できないか?ということに。
弊社の所在地である射水市の内川周辺は、歴史ある漁師町です。古くから大事に受け継がれてきた家々が連なる、とても趣深い町並みが続いています。かくいう我らが社屋も、古民家を改修した建物です。そんな土地ならではの素材を使い、物語を詰め込んだ楯を制作することになりました。
小屋の中には漁師網や道具が山積みに!かつての暮らしぶりがうかがえる、文字や釘といった痕跡があちこちに残っていました。
軽い気持ちで下見に来たつもりが、お宝がいっぱいで妄想がはかどります!漁師道具や滑車、ロープに網、使い古された棚、トタンの壁…様々な素材が溢れていて、どう組み合わせるか悩ましい…。
存在感があって、物語が感じられて、つい飾りたくなるもの。そこでたどり着いたのが「窓」モチーフの楯でした。
自社で記念楯制作の前例がないこともあり、何もかもが手探りでした。
なにの、どこの、どんな素材を、どれだけ確保したらいいか?からもう未知数。素材にアタリをつけて、収集する日と方法を決め、古い木材やガラスの加工ができるところを探すことに。
窓に使うガラスは、屋内の扉に使われていた「昭和型板ガラス」で、いろんな柄があって可愛い!!が、取り外すためにバールとノコギリで扉を解体。普段使っているような扉がどんな構造なのか大変勉強になりました…。
木材は、2階の手すりと階段の側板を確保。手すりはノコギリで切り出し、立派な側板は建物工事の際にカットしていただきました。それらの素材を富山市と魚津市の加工会社にて形にしていただきました。
大枠ができたら仕上げの演出は私達のお仕事!
安全のためにガラスの裏面にフィルムを貼り、漁師網を取り付けて仕上げです。お渡し用に、作品の説明つき風景のカードを添えて、風呂敷に包みました。
番屋の持ち主の方をはじめ、たくさんの方々の知恵と助けを借りて、1点ものの記念楯ができました。窓を覗き込むと、かわいい型ガラスの向こう側に、キラキラと輝く風景が映ります。船で旅をしながら、たくさんの景色を映し、たくさんの人々に覗き込まれるのかなぁ‥と想像が膨らみました。
はじめての試みでしたが、喜んでいただけたとのことで良かったです!地元の素材を使った記念品、考え甲斐も作り甲斐もあって、とてもいい経験になりました。いつか船の中で目にしてみたいなぁ。
(伊藤)